コロナで外出自粛の日々、いかがお過ごしでしょうか。
スタジオも休業なので、
僕はジタバタせず開き直って
「自宅を居心地よくしよう」キャンペーンを
絶賛開催中です。
上の写真は、妻の手によって窓際に現れたカフェスペース。
まさかこの場所に、こんな空間が作れるなんて・・・。
ちょっと視点を変えるだけで、普段の見慣れた景色も
こんな風に変えていけるんですね〜。
発想の転換って本当に大切ですね。
さて、今回は
僕がモーラー奏法を習う前のお話。
僕は20代の頃、サポートの現場で
バリバリ演奏をしていました。
バークリー式のメソッドを一通り習った後だったので
かなりの種類のリズムパターンやルーディメンツ、
5連や7連のコンパウンドスティッキングなんかも
バッチリ身体に入っていました。
なので、予定では多くの現場で
柔軟に対応できたはず・・・
だったんです。
ところが、現実は違いました。
多くの現場でリズムが「ハマらない」んです。
どんなにフレーズをたくさん知っていても、
粒が揃った音で、正確に、速く叩けても、
どうしてもノリが合わない。
ひどい時には「もっと人間味のある感じでやってよ」と言われた挙句、
せっかくレコーディングしたテイクが
打ち込みの音源と差し替えられるという案件もありました。
もうね。
本当に悔しかったですね・・・。
リズムがハマらない現場に出ると緊張し、
身体が固くなり、余計にパフォーマンスが落ちる悪循環。
僕がモーラー奏法を習おうと決意し、
恩師のいるK’s musicに電話をかけたのは
そんなスランプの真っ最中でした。
モーラー奏法というとスピード、パワー、持久力といった
「アスリート的な側面」ばかりが注目されがちですが、
僕が期待したのは音色、ダイナミクス、
そして何より「グルーヴ」の改善だったんです。
スティックの持ち方を一から見直し
「音が出る」という現象について
とことん突き詰めた3年間。
それはただドラムが上手くなるだけではなく、
僕のその後の人生をガラリと変えてしまうほどの
大きな経験になりました。
僕は、モーラー奏法を習得して
本当に良かったな、と思うことが一つあります。
それは「力を込めなくてもドラムは十分に鳴らせる」
というのが身体で理解できたことです。
ドラムをしっかり鳴らしたいなら、
むしろ力は込めないほうがいいんです。
これは本当に重要なことなんですが、
残念ながら、そのことに自分一人で
気付くことができる人は、ほとんどいません。
なぜなら、人間の本能として
「音が出るときには、力を込めるのが自然」
だからです。
人間は「音」という刺激に対して、
力を込めて身体を守る反応をします。
本当は安全なんだけど、脳が危険と判断して
「力を込める」という反応をしてしまうんですね。
これを「防御反射」といいます。
防御反射は人間が身体を守るための
本能的な反応なので、
修正するためには、それなりの訓練が必要です。
ドラムの衝撃が安全だということを身体で理解できるまで、
繰り返し脳にインプットし直す作業が必要なんです。
しかし、これを一人で出来る人はとても少ない。
だから、モーラー奏法は難しいと言われるのだと思います。
実際に、僕も一人では無理でした。
師匠がいてはじめて気付くことが出来て、
一つずつクリアしていったんです。
ところが、これが3歳くらいまでの幼児だと
衝撃を怖がらず
遠慮なく叩くことが出来ちゃいます。
手が痛くなってもお構いなし、
うるさくてもお構いなし、
叱られてもお構いなし(笑)。
意外なことに、大人もこれを見習うと
スルッと上手くいく場合が結構あります。
そう。
「叱られる恐怖」というのも
余計な緊張を生む要因なんですね。
「こんなに大きな音を出したら叱られる」
「こんなにふざけたら叱られる」
潜在意識にそういう思いがあると
リミッターがかかり、
音を出すことに対して遠慮してしまうんですね。
ドラマーはみんな、ドラムを叩くことに対して
一度はリミッターを外す作業をした方が良いです。
人に迷惑をかけようという意味ではなく、
本当にリラックスしたときに
どれくらいの音が出るのかをしっかりと味わい、
体感する作業をした方がいいですね。
今はコロナの影響で自宅練習が多いと思いますが、
パッドでも、思い切り叩く練習も取り入れた方が良いです。
騒音が気になる時は
大きいタオルとか使って対処すると良いですね。
「考えるな、感じろ」。
自宅練習は頭で考え過ぎになってしまいがちですが、
こんな時だからこそ、身体で感じ取ることを
意識して欲しいなと思います。
それでは、今日はこのへんで。
ありがとうございました!