こんにちは!山北です。今回は「フラムのススメ」です。
スティックコントロールの基礎を身につけ、表現の幅を広げるのに最適な「ルーディメンツ」。ダブルストローク、パラディドル、○○ストロークロールなどを含む26種類(NARD)または40種類(PAS)が設定されていますが、僕は最初に取り組むルーディメンツとして「フラム」をオススメしています。(DVDでもフラムから解説を始めています)
実は「フラム」にはドラミング全般に必要な「動きの法則」が詰まっており、これが理解できるとその後の練習の効率が格段に違ってきます。ここに手引きを記したいと思います。
1.フラムは自然落下、脱力の感覚を覚えるのに最適
なぜ、フラムなのか?
第1の理由は「2本のスティックを自然落下させる感覚を覚えるのに最適だから」です。
ここで毎クリニック時に、いつもアランが力説していたルーディメンツについてのコメントを紹介しておこう。(中略)たとえば今ここで、1 pairのスティックを地面に落としたとして、(彼はいつも、クリニック時に実際に実演していた)「さてこの音は?・・・フラム!だろ」(アランドーソン ドラムメソッドVol.1 / 水野オサミより引用)
2つの物体=スティックを一緒に床に落とした時、着地のタイミングが微妙にズレて自然と「フラム」になる。故・アランドーソンもフラムをこのように捉えていたのですね。そこにコントロールは必要なく、起きている現象をただ観察するだけ・・・という感覚。この「なすがまま」の感覚こそが、脱力の出発点になるのです。
2.「緩急をつける」本質的なコントロールの練習ができる
自然落下の感覚がつかめたら、次は「落とす速度のコントロール」です。
ルーディメンツ攻略で一番難しいのは「音に適切な強弱をつけること」。特にフラムやラフ、ドラッグなどの装飾音が必要なフレーズにおいては、アクセントと装飾音をいかに区別して演奏できるかが課題になります。フラムはそういった「緩急」のコントロールを練習するのに最適なんですね。
僕自身の体験談になりますが、僕はかつて音の強弱をスティックの「振り上げの高さ」でコントロールしようとしており、伸び悩みの大きな原因になっていました。速いフレーズになると音量が均等になってしまい、メリハリのない演奏になってしまっていたんです。
必要なのは高さのコントロールではなく、振りの「スピード」、すなわち「緩急」のコントロールだったのです。「動きに緩急をつけることで音量を変えられる」ということに気づいた時から、僕の演奏は格段にスムーズになりました。そこに気づくきっかけになったのがフラムだったのです。
左右交互のフラムは、音量コントロールの最高の練習になる
フラムはご存知の通り「装飾音→実音」、すなわち「小→大」のセットです。これを左右交互に行うには、スティックの動きの「緩急」を自在に操る感覚が必須になります。
一般的には、「強弱は振り上げの高さで決めましょう」という考え方が多いですが、これをストロークの「スピード」を変えることで実現していくのです。
装飾音はゆっくり当てる。実音は素早く当てる。
とにかく、このことを徹底します。ポイントは「全ての音を腕全体の動きで出す」ということ。小さい音も大きい音も、すべて「腕全体」で出します。決して「小さい音は手首だけで」などと変えたりはしません。全ての音を、同じ奏法で鳴らします。
変えるのは「動きのスピード」だけです。
3.左右のタッチの独立が養われ、音色が改善できる
偉大な先達、ピーター・アースキンの教本から引用です。
エクササイズ:あなたは、左手でお腹をさすりながら右手で頭を叩くことができますか?(中略)今度は手を入れ替えましょう。右手でお腹をさすって左手で頭を叩きます。(ドラムセット・エッセンシャルVol.1 / ピーター・アースキン 文・写真ともP34より引用)
フラムを練習すると、こうした左右の手のタッチを独立させる感覚を養うことができます。これは音色の改善につながり、ドラミング全体に役立ちます。
- ハイハットがうるさい
- ゴーストノートが苦手
- ジャズのコンピングがうるさい
などでお悩みの人にフラム、特に左右交互のフラムの練習を特にオススメする理由がこれです。
余談ですが、これはブラシで「左手でこすりながら右手でアクセントを叩く」時の感覚と酷似しています。ブラシをマスターしたい人にもフラムは超オススメです。
4.左右交互の動き=「パラアップ」もマスターできる
左右交互のフラムを練習していくと、左右の肩甲骨の連動の感覚がトレーニングできます。右が上がると左が下がる。あるいは、右が内旋すると左は外旋する。逆もまた同じです。
この「パラアップ」の感覚が身につくと「半自動で音が出る」という状態になり、ドラミングに必要な力が格段に少なくて済むようになります。両手で車のハンドルを回すような感覚で、右を鳴らせば左も付いてくる、左を鳴らせば右もまたついてくる。これが分かれば、ただ力を抜くだけではない、脱力の一歩先の感覚が身につきます。
5.高速連打やパラディドルの基礎にもなる
前述の「パラアップ」の感覚がわかるようになると、動きが半自動になるので高速連打につながります。特にパラディドルなど左右交互のフレーズは、フラムから導かれる部分が大きいです。また、バディ・リッチやジェフ・ポーカロに代表される抑揚のあるシングルストロークも同じくパラアップの感覚を活用できると見えてきます。
まとめ
フラムはスティックの動きの「抑揚」を練習するのに最適で、あらゆるフレーズの基礎になります。伸び悩んでいる人は、ぜひ左右交互のフラムに取り組んでみてください。きっと新しい発見があるはずですよ!