身体にはたくさんの筋肉があります。

僕も整体を勉強し始めたころ、解剖学の本を買ってきて暗記しようとした時期がありました。でも、すぐに挫折しました。

それらの名前を覚えて「〇〇筋を動かそう」といったことを意識して取り組んでも、100%上手くいかなかったからです。

なぜなら、身体はパーツで動かすものではないからです。

身体を動かすのは、意識です。
何かの目的があって、それを達成するために身体が動くのです。

ためしに、スティックケースからスティックを取り出すとき、どの筋肉を使っているか意識してみてください。

そして解剖学の本を開き、いま使った筋肉はどれだろう?と調べてみてください。

握力に関わる筋肉だけでも大量にありますし、身体をかがめるときに重心が移動することで、実は全身の筋肉が使われています。

これらをすべてトレースすることは不可能。

つまり・・・考えるだけ無駄なんです。

そこで僕が採用しているのは、「身体をエネルギーの通り道として捉える」という方法。

エネルギーというと非科学的な感じに聞こえるかもしれませんが、身体の動きをコントロールしようと思ったら、この漠然とした感じがとても有効なんです。

体重、重力、慣性力、筋力といった力学的なエネルギー。
音を出そうとする意志、聴かせようとする気持ちといった目に見えないエネルギー。

「エネルギーの通り道として身体が機能しているか?」

という捉え方で見てみると、身体が上手く使えているかどうかは自ずと判断できます。

「なんだか動きが固いな」と感じる時は、身体のどこかでエネルギーが止まっています。詰まりをなくすためには、どう動けばいいのかを考えるのです。

筋肉の名前は関係ありません。

骨格の形くらいは知っていた方が良いですが、筋肉は目で見て覚えるのではなく、感じ取るほうが上手くいきます。

多くの場合、エネルギーの詰まりは「逆流」によるものです。水が高いところから低いところへ流れるように、エネルギーも大きな部位から小さな部位に向かって流れます。

力学的に、一番大きな力を持つのは「地面」です。だから足裏が一番大切で、そこから足首、膝、股関節、骨盤、背骨、首、頭。

枝分かれして、ろっ骨、肩、肘、手首、指・・・そしてスティック。その先にドラムがあります。

(フットワークについては別の機会に話しますね)

このエネルギーの流れをつかむためには、立って練習するのがオススメです。

座るって、実はすごく難しいんです。イスのところでエネルギーの流れが止まってしまう人が本当に多いです。

フットワークがうまくいかない人は間違いなくこの状態ですね。座り方についても、あらためてお話ししますね。

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エネルギーの流れを感じ取るようにすると、身体の使い方が見えてきます。

痛くなったり、違和感を感じたりする場所があったら、多くの場合「上流」、つまり「地面に近いところ」に問題があります。

立って練習するとわかりやすいのですが、たとえば膝を固めるクセがある人は、膝を少しゆるめるだけで手が動きやすくなります。

反り腰で背骨を固定するクセがある人は、腰を軽く丸めるだけでおなかの力が抜け、肩も腕も動きやすくなります。

身体は全体がつながっていて、パーツだけを変えても動きは生まれないように出来ているんです。

そんなつながりを文字通り「身体で覚える」ために、「エネルギーの流れで捉える」という方法をオススメしています。

モーラー奏法というのも、エネルギーの流れをスムーズにするための具体的なメソッドの一つに過ぎません。

DVDではそうしたエネルギーの流れを感じとるための動きの「型」を多数ご紹介しています。ぜひ意識して取り組んでみてください。